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ビジネス法務2003年9月号(中央経済社)25頁
ついに成立!個人情報保護法にどう対応するか

 夏井高人×鈴木正朝「個人情報保護法の意義と限界」【対談】





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 あらゆる個人情報の取扱いの問題に,行政庁が関与できるとすると,何のための法律か,ターゲットがよくわからなくなるのではないかと思いますが。

夏井 そうですね。プライバシーの保護ということを法目的として考えると,行政権を肥大化させてしまうことにつながる面があります。
 また,もう一つ注意して頂きたい点があります。さきほどこの法律は,業法であるといいましたが,これまで「業」というと,営利事業者を「業」と考えてい たわけですよね。けれども,この法律は,社会的に反復継続して行うものを全部「業」として捉えるようですから,刑法の業務上過失致死傷罪で言うような 「業」に近い考え方を採用していることになります。
 そうすると,これまで営利事業者でないから関係ないと思っていた人たちも,個人情報取扱事業者として, 法の適用を受けるというようなことが出てくるでしょう。個人情報取扱事業者という法律概念を介して,行政権の及ぶ範囲が広範に拡大しているという点に着目 すべきでしょう。

鈴木  「個人情報」概念が非常に広範であること,「個人情報取扱事業者」の概念が従来の「業」と異なり営利事業者に限定されないことは,ある意味法目的の曖昧さ と表裏をなすものだと思います。個人情報保護法の解釈においては,こうした行政権の濫用の危険性を抑止する法解釈ないし法理論が求められるのではないかと 思っています。

司法救済の限界と可能性

鈴木  プライバシーの侵害があった場合の裁判所による本人救済は,一般に紛争の解決までの時間が長く費用も高いとか,仮に勝訴しても損害賠償額が低額で,差止請 求も認めらない場合があるなどその限界が従来から指摘されていました。そういうこともあって,迅速で本人の費用負担が少ない個人情報保護法制へのニーズが 高まっていたという面もあったように思います。

 プライバシーに係る個人情報の保護については,裁判所による事業救済だけではなく,プライバシーの権利と隣接する個人情報保護法制を拡充することで,その救済の実効性を担保しようとしたということも言えるのかもしれません。
 プライバシーに係る個人情報の保護について裁判所が果たす役割は今後も限定的なものに止まると考えてよろしいのでしょうか。

夏井  いや,やり方の問題だろうと思います。もし私が立法に関与できるとしたら(笑),ただ一カ条だけ,「他人のプライバシーを侵害した場合の損害賠償額は,個 々の侵害行為毎に,少なくとも500万円以上であると推定する」というような損害賠償額推定条項をつくりますね。
 それだけで裁判官は仮差押えや仮処分をす ることが非常に容易になります。それによって和解による解決も多くなるのではないでしょうか。判決だけで解決しようと考えるからいろいろ限界がでてくるわ けで,一時的な救済手段として,現行の民事保全制度を活用することも検討すべきで,そのための立法政策を考えていくこともできると私は思います。

鈴木 民事保全制度を活用するための損害賠償額推定条項を立法化すれば,行政規制とほぼ同等の迅速な対応ができるということでしょうか。

夏井  迅速性の問題だけではなく,裁判所の方が行政庁よりもずっと公正に紛争解決できるのではないでしょうか。もちろん行政手続法もありますが,行政処分におい ては当事者主義に基づく審理システムにはなってないので,規制を受ける事業者はどうしても弱い立場になりますね。
 裁判所の場合には,判断者が独立してい て,申し立てた人間と申し立てられた人間の対立構造の中から,緊急命令を出すかどうかを決めていくわけですからより公平な判断が可能です。


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