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ビジネス法務2003年9月号(中央経済社)28頁
ついに成立!個人情報保護法にどう対応するか

夏井高人×鈴木正朝「個人情報保護法の意義と限界」【対談】




(Page7)

夏井 ブラックリストの存在自体について合理性を説明できれば,裁判所が救ってくれることもあると思うけれども,原則としては開示せざるを得ないでしょうね。
 日本の伝統的な通説的な考え方から言ったら,ブラックリストは違法なのでしょう。それは,これまでは建前上存在しないものとして扱ってきたから誰も問題にしなかっただけだと思います。

鈴木 原則は,開示せざるを得ない。そうすると,もう企業としての道は2つしかなくて,徹底的に隠す,もしくは徹底的にガラス張りにする。この決断をするほかないということでしょうか。

夏井  どっちにしても企業に対するイメージは下がるでしょうね。それから,隠した場合には違法になるから,行政の規制対象にはなるでしょう。ガチガチのプライバ シー原理主義者的な考え方からいけば,例えば,犯罪者情報はプライバシー情報だから,ほかの人が持っていてはいけないということになっています。
 顧客に対するマネジメントあるいはマーケティングの問題として,そういう情報を特別に取り扱うことは,プライバシーだけの関連から言うと,許されないということになります。ただ,これはプライバシー原理主義者の場合です。
 私は最近社会の中で共有すべき悪いやつらの情報というのはやっぱりあるだろうと思っています。ただ,前提として,そういう人がここにいるよという情報は 与えるけれども,その人を差別しちゃいけませんね。そのあたりの線引きはきちんとする必要があります。

鈴木 では,情報の共有までは許す。注意しながら,商品・役務の提供はもちろんしますということですね。ただし,違法行為があったら,それはそれで毅然として訴訟を起こせばいいと。

夏井 そうです。はっきりした証拠もないのに,疑いだけで不利に取扱うのは,それは差別だということです。

鈴木  開示等の求めに応じると企業が成り立たないような類の個人情報について,主務大臣が開示せよと命令してきた場合は,個人情報取扱事業者においては主務大臣 に対してノーといわなければならないわけですが,そのまま放置していては,罰則の対象となり,犯罪企業のレッテルを貼られることになります。従って,行政 事件訴訟により,当該命令を取消してもらうというアクションを起こさざるを得ないということになります。
 でも,実際は行政を相手に訴訟を起こすことはまれです。実はそこまでしなくてもなんとかなるからです。
 まず,こうした発想をとる前提として,ブラックリスト的機能は必要であるという立場にあるということになります。しかし,ブラックリストが存在すれば, 当然それに載せるべきか否かの判断を間違えるときがあるので,そうしたヒューマンエラーが介在しないシステムのあり方が求められますし,その一環として本 人の開示等の求めに堂々と応じるしくみも必要となるのだろうと思います。
 その方法としては,一つに,開示しても本人を不快にさせない表示をすること,そして企業として一定の要注意情報を共有できるようにすることでしょう。例 えば,淡々と数字を記載し,その数字から事実を読み取らせることでブラックリスト機能を果たすことも可能なはずです。少なくともDB上に担当者の自由記載 欄を設けて,「変な奴」など相手の人格を傷つけるような記載が可能になってしまうようなお馬鹿な設計をしないとか,個人的にはアイデアはいろいろあるとこ ろです。
 
また,ブラックリストの開示を求められたら当該本人の「保有個人データ」を削除して,開示しない。

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